ギャンブル依存が疑われる犯罪において、その供述としてギャンブルの他に「借金の返済に使った」「生活費に使った」などと報じられることがあります。
また犯罪の手口の周到さや常習性が殊更強調されることもあります。
それらは事実なのでしょうが、依存症者の支援にあたっている立場からすると、これらの報道に以前から違和感がありました。
依存症者と身近に接したことがない方にとっては、これらの報道に際すると「お金に異常に執着する奴が好き勝手散財した中でギャンブルにも使っているのか」「これだけ悪いことをするような奴だから身勝手にギャンブルでも散財するのか」といった印象を持ってしまうのではないでしょうか。
「そもそも問題がある奴だからギャンブルでも散財しているのだろう」との誤解が世間に生じてしまっているのではないかと懸念します。
ギャンブル依存の場合、これは逆の話です。
ギャンブルでお金が回らない、それでもギャンブルが止められないからこそ生活費なんて当然足りなくなるし、借金もする、そして犯罪に手を染めてしまうとそのお金をギャンブルだけでなく(ギャンブルを続けるために)生活費や借金の穴埋めにも使うことになるのが実情です。
「ギャンブルの問題(依存症)が悪化したことにより問題のある奴になってしまった」のであり「問題がある奴だからギャンブルでも散財している」わけではありません。
このような人格攻撃に向かいかねない誤解が、依存症の当事者や巻き込まれているご家族のみなさんをより孤立させることに繋がるのではないかと心配になります。
さて、このようなことを書いたきっかけは、水原一平さんの件で田中紀子さんが書いた記事を読んだことにありました。
検察の言い分がおかしいのではないかという意見の中で似たような記述がありました。
参考までに少し長くなりますが以下引用しますのでご参照ください。
(引用はじめ)
検察は、「歯の治療費や野球カードの支払いも盗んだ金からしている。これはギャンブルとは関係ない。だからギャンブル依存症ではなく彼は強欲だ」と言っていますが、この言い分には思わず苦笑してしまいました。
26億円もの巨額詐取事件を起こしていて、なんとかその穴埋めをしようと、大当たりを出すまで必死に賭けている状況でですよ「このお金は盗んだお金だから生活費には使えない。ギャンブルの元手にしなきゃ」などと考えるでしょうか。
ギャンブル依存症者が自転車操業に陥った時には、とにかくお金を回すことしか考えません。「損失を取り戻すために賭けるギャンブルの元手がなくなる」この最悪の事態だけは避けようと、何がなんだかわからなくなります。とにかく目先のお金を返すというか、グルグル回すことだけに必死になっているのです。それが自転車操業の地獄です。
ギャンブル依存症者は借金が返せなくなることが怖いのではありません、借金が出来なくなり、ギャンブルの元手がなくなるのが怖いのです。
ですから、ギャンブルの元手を作るために、それ以外のお金も必死に自転車操業をした。そして野球カードなどの少しでもプレミアがついて、高く売れそうなものを仕入れて、金に換えようと思った。こんなことは我々ギャンブル依存症者の間では普通に起きています。なんなら兄弟や友人のカードやゲーム機でも売り飛ばしてしまいます。
そして、銀行に大谷選手になりすまして電話をしている、水原さんの声も公開されましたが、もちろんそのくらいのことはやります。全く驚きません。
我々ギャンブル依存症の家族はVIPではないので、銀行の専用オペレーターなどいませんが、ギャンブラーが家族や兄弟姉妹、友人、時には恋人になりすまして、キャッシュカードやクレジットカードを使ってしまうなど、日常茶飯時に起きています。
(引用おわり)
驚いた水原一平さんの論告求刑 日本と同様依存症への理解が薄い検察官に伝えたいこと
https://addiction.report/NorikoTanaka/mizuhara-kyukei

